小学6年生の頃、学校の教室で机の角に手をぶつけ、親指が動かなくなってしまい、母が懇意にしていた按摩さん宅に連れていかれ、初めて鍼治療を受けました。
親指の付け根当たりに、盲目の按摩さんに何回か鍼を打たれ痛かったが、治療後すぐに親指が動くようになったので驚いた記憶があります。なので鍼には抵抗が無く、現在でも腰痛になった時など、鍼灸師さんのお世話になります。
今も手引き歩行が出来る102歳の義母が、5年前に腰痛で受診した近所の接骨院で、若い先生に鍼の治療を受けた後、半年間歩けなくなった事があります。施術士の力量を見抜けないと危ないというか、やはりこういう医療事故などのイメージから、世間に広まらないのでしょうか。
鍼は痛くなく、灸は熱すぎないのが原則ですが、もしそうでなければ、やり方がうまくない証拠です。痛くない治療の第一条件は、熟練した鍼灸師にかかることです。不慣れな針灸師にかかると「やっぱり鍼は痛かった」と、鍼灸のイメージがますます悪くなります。
鍼灸で使用される針は髪の毛よりも細く、もしくは同等の細さですし、お灸についても、最近は間接灸という直接お灸が肌にあたらないものが主に使われます。
鍼による感染ですがこれは昔の話であり、現在はほぼあり得ないリスクです。昔は金や銀の鍼を使用する度に殺菌して再使用するのが常でした。その際に殺菌が不十分であったり、殺菌をしていない鍼を用いることで感染症を招くことはありました。
ただし、現在は1回限りの使い捨て鍼(ステンレス)を使用することが多いので、感染のリスクはあり得ないといえます。一般の方が鍼灸に対して持っているイメージは、いまだに8割がたが「怖い」「痛い」「熱い」なのだそうです。
お灸に使う、もぐさには燃え草の意味があり、キク科植物ヨモギの葉の裏に密生する綿毛を日陰で乾かして作られます。お灸はただ患部に熱刺激を与えて治療すると思われますが、もぐさが燃える時に放出される有効成分が皮膚に与える影響があります。なのでお灸にはもぐさを用います。
もぐさが燃え尽きかける時に、親指と人差し指でもぐさを素早くつまみ取ります。やけど跡が残るのはやり過ぎです。経穴(ツボ)に正確にお灸をすえるのが、熱くないお灸の重要な条件です。
鍼灸は神経症やノイローゼといった神経系の疾患から、高血圧のような循環器系疾患、そしてドライアイや貧血など、沢山の疾患に対して有効だということを、米国国立衛生研究所も認められています。

本来、市民患者の最も身近な医療であるはずなのに、現代では最も疎遠なものになっています。治療費も、西洋医学は健康保険が使えるのに、鍼灸は健康保険がほとんど使えないことも鍼灸が広がらない原因のひとつだと思います。
明治初期に日本の政治体制が切り替わった時、当時の富国強兵政策の観点から、鍼灸漢方は軍事医学として失格とされたことや、漢方薬業界の近代化が立ち後れ、漢方薬業界の政治力が弱く、厚生行政への発言力が全くなかったことや、鍼灸漢方医の意識が、西洋医に比較して極めて保守的であったことが大きく影響しています。
例えば、栄養失調症の脚気(かっけ)で行われた、西洋医学との治療法の比較実験では、当時の西洋医学的治療法に勝っていた鍼灸漢方医学が、治療法の公開を拒否したことで、鍼灸が健康保険対象から外れ、医療界から遅れたと歴史に書かれています。
良い針灸師の条件は、絶対治るとか、万病に効くなどの誇大な自己宣伝をしない、知的で精神的にも優れた人物ではないでしょうか。
引用文献:木下檠太朗/鎌江真五 著:暮らしのなかの針灸漢方
いつの時代も政治的な理由で、純粋な効果によるものではありません。
江戸時代は逆に蘭方禁止令が出ていましたが、これは、将軍のお抱えの
医師(奥医師)が漢方医達だったからです。
現在も政治的な理由で、西洋医学だけが唯一の正当な医学という認識で
全ての制度が運営されていますが、
財政難で、現在の病院はもちろん、介護も、もっと、厳しい制度へと
変わっていくと思います。その時に、東洋の知恵(自然療法全般)
がいかに活かせるかという事だと思います。
コメントありがとうございます。
私がお世話になっている針灸師さんに、鍼灸について書きたいので本を貸してもらえないかお願いしたら、針灸師さん自身が教えを受けた先生から、最初に読む本と教えられた本を貸していただきましたので、良い記事が書けたと自画自賛してます(^_^;)。